もくじ
はじめに:命が助かった、その先へ
現在、日本では女性の9人に1人が乳がんを経験すると言われています。
にもかかわらず、手術後の外見や心のケアについて、社会的な理解や支援はまだ十分ではありません。
「命が助かっただけで十分じゃないの?」
そうした言葉が無意識に生まれる背景には、**“治療が終われば支援も終わり”**という固定観念が根強く残っています。
しかし、治療後も外見の変化に悩み、社会との接点を失ってしまう方は少なくありません。
再建率17%——なぜ日本では“見た目の回復”が進まないのか
厚労省の報告によれば、日本の乳房再建率はわずか17%。
一方、アメリカでは約40%、韓国では50%を超えると言われています。
その背景には、
- 育児・家事・仕事で再建にかける時間が取れない
- 手術への不安(身体的・精神的負担)
- 「もう年齢的にいいかな」という諦め
- そもそも選択肢として知られていない情報格差
など、社会的・文化的な要因が大きく影響しています。
「再建しないこと」が心に与える影響
再建を選ばなかった女性たちの声には、以下のような切実なものが多く含まれます:
- 「温泉や更衣室で人の視線が気になる」
- 「女性としての自信を失った」
- 「服や下着が合わず、毎日がストレス」
こうした悩みは、自己肯定感の低下や社会的孤立にもつながります。
企業として、この“声にならない声”に目を向けることが、これからのCSRのあり方として注目されています。
エピテーゼ(人工乳房)という“もうひとつの支援”
エピテーゼ(人工乳房)は、手術を伴わずに見た目を整える外見ケアの一つです。
- 脱着可能
- 水回り(温泉・プール)でも使用可
- オーダーメイドで自然な仕上がり
- 心理的サポート効果も大きい
医療・福祉・美容のいずれにも属さない新しい支援形態として、医療現場やNPOからも注目が高まっています。
乳房再建手術とエピテーゼ(人工乳房)の違い(比較表)
比較項目 | 再建手術 | エピテーゼ(人工乳房) |
---|---|---|
方法 | 外科手術(自家組織・インプラント) | オーダーメイドで製作(非手術) |
負担 | 入院・再手術/身体的負荷あり | 脱着可能/約3~5回の打ち合わせ |
対象 | 手術可能な健康状態が前提 | 年齢や体力を問わず対応可能 |
費用 | 保険適用あり | 自治体により助成金補助あり |
特徴 | 医療の延長線上 | 心の回復にもアプローチ |
どちらにも利点がありますが、再建が難しい方にとって、エピテーゼ(人工乳房)は実用的かつ心理的な救済策となり得ます。
企業・団体ができる支援とは
社会的な孤立を防ぎ、女性たちの「再スタート」を支える取り組みは、企業のCSR/ESGの新たな柱となります。
支援の例:
- エピテーゼ購入費の助成(福利厚生/寄付)
- 協会・支援団体との連携による活動資金サポート
- 就業復帰支援・心理ケア支援との連動
- ストーリーを社会へ発信することで、風土を変える広報貢献
“見た目”の課題は、社会全体の課題
乳がん治療は、病気を治すだけでなく「人生を取り戻す」過程でもあります。
私たちができるのは、「治ったあとの人生」に寄り添うこと。
外見を整えることで、社会との接点を取り戻し、「誰かとまた会える」「鏡を見ても怖くない」そんな毎日を取り戻す女性たちがいます。
その“もうひとつの道”を、企業とともに支えていきたいと考えています。