患者ではなく「親」が孤立している現場を見てきたから

こんにちは。千尋です。

今回は、「親が孤立している現場」を語ります.

とある病院で働いていた頃、小耳症のお子さんを育てているお母さんとお話する機会がありました。

10歳の女の子。本人はおっとりした性格で、耳のことを気にしていないようにも見える。

それでも──いえ、それだからこそ、お母さんは不安でたまらない様子でした。

小耳症の子育てで親が感じる不安と孤独

「これからの習い事、修学旅行、部活動……どうしたらいいんでしょうか」 「聞こえづらさがあるなかで、うまく友達と関われるのか心配で……」

そんな声を、私は何度も聞いてきました。 本人は元気で前向きでも、親の心配は尽きません。 とくに周囲の理解が得られにくい“外見の違い”においては、親のほうが情報不足や孤立を感じやすいのです。

小耳症と育児:医療では教えてもらえない現実の悩み

親御さんたちは、インターネットで調べ、いくつもの病院を回り、情報を求めて話を聞きに来てくださいます。 けれど、どこでも説明されるのは「手術の方法」や「治療の流れ」ばかり。

「片耳難聴の子どもとどう向き合えばいいのか」 「学校にどこまで伝えればいいのか」 「本人が外見の違いを気にしはじめたら、どうサポートすればいいのか」

そういった“日常の悩み”には、医療者として十分に応えきれなかったことが今も心に残っています。

同じ悩みを持つ親とのつながりが支えになる

「もっと同じ立場のママたちと交流ができたら……」

あのお母さんは、そう話してくれました。 医学的な説明ではなく、経験に基づいた知恵や共感こそが、心の支えになることもあります。 孤独を感じる親にとって、「自分だけじゃなかった」と感じられることは、何よりも大きな力になります。

小耳症の子どもと向き合う親を孤立させないために

“支える”というのは、情報や技術を届けることだけではありません。 ときに、ただ「一緒に考えてくれる誰か」がいるだけで、安心できることもあります。

私は、エピテーゼの活動を通じて、医療の外にあるもうひとつの選択肢を伝えていきたいと思っています。

たとえば、外見の違いによる不安を少しでもやわらげるために。 たとえば、「こういう方法もあるよ」と伝えられる準備の機会として。

親が孤立しない社会へ。 その第一歩は、情報と声が届く場所をつくることだと、私は信じています。


千尋(ちひろ)

看護の現場では、外科的な治療で体の状態は整っても、それだけでは癒えない「心の痛み」や、見た目の喪失感に向き合う場面が多くありました。医療の枠を超えた支えが必要だと感じていた頃、エピテーゼ(エピテ®)という新しい選択肢に出会いました。「もっと広がるべき支援だ」と感じたことをきっかけに、伝える活動を始めました。
35歳・看護婦(パート勤務)・独身

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