「どうすれば正解ですか」
「失敗しない選択を教えてください」
現在、多くの学習・育成の現場で、このように「正解」を前提とした問いかけが当たり前のように見られます。
当スクールにおいても、同様の質問が寄せられる場面は少なくありません。
慎重であること自体は、決して否定されるものではありません。
ただ一方で、そこには共通する違和感も見えてきます。
それは、正解があらかじめ存在する、という前提での思考です。
なお前回の記事「なぜ資格や肩書きだけでは通用しなくなったのか|変わりゆく働き方の現実」では、この背景となる社会構造について詳しく説明しています。
あわせて一読されることをおすすめします。
もくじ
かつては「正解」が外部に用意されていた社会だった
終身雇用や年功序列が前提とされていた時代には、正解は「個人が考えて作るもの」ではありませんでした。
進学や就職、結婚、働き方。
何を選べば安全なのか、どのルートが「失敗しない」のか。
そうした基準の多くは、社会や制度、権威の側があらかじめ用意していました。
そのため、多くの人は、自分で細かく判断しなくても、生きていくことができました。
むしろ、個人が独自に決めることは、必ずしも歓迎されない場面も少なくありませんでした。
「正解に従うこと」こそが、合理的で、リスクの少ない生き方とされていた時代です。
正解を探す思考は、個人の問題ではなく社会構造の名残
こうした前提は、教育や社会の仕組みを通じて、当然の前提として刷り込まれてきました。
その結果、正解は自分で決めるものではなく、誰かが決めてくれるものだという前提が定着しました。
これは、個人の怠慢や判断力の問題ではありません。
社会の側で設計された前提に、人の思考が合わせられてきました。
その結果、それが「当たり前の考え方」として残ったのです。
正解が消えた時代に、思考の前提だけが取り残されている
しかし現在、社会は明らかに別のフェーズに入っています。
正解があらかじめ用意されることはなく、選択の結果は、実際に動いてみなければ分からない。
途中で修正すること自体が、前提となる時代です。
一方で、人の思考はどうでしょうか。
多くの場合、「正解があるはずだ」という前提のまま置き去りになっています。
この前提と環境のズレによって、正解を探し続けてしまう。
決めきれず、動けなくなる。
そうした状態が生まれています。
当スクールでも、
「どうすれば正解ですか」
「失敗しない選択を教えてください」
といった問いが繰り返されます。
これは意欲や能力の問題ではありません。環境は変わったのに、思考の前提だけが更新されていない。
その結果、決められない・動けないという状態が生まれています。
資格や技術だけでは仕事が成立しない理由
こうしたズレは、会社か個人かを問わず、仕事の現場全体で見られるようになっています。
その影響は、資格や専門スキルの分野にも及んでいます。
資格やスキルは、今も重要です。
しかし、それだけで仕事が成立する時代ではなくなりました。
エピテーゼ製作の現場でも、同じズレが起きています。
技術的に優れていても、それだけでは仕事として成立しない場面は、現実に存在します。
正しく作れることと、仕事として継続できることは、同義ではありません。
いま現場で求められているのは、技術そのものよりも、調整やルールの理解、相手とのやり取り、状況に応じた判断を含めた全体の成立です。
つまり、「正解としての技術」と「仕事として成立すること」は、すでに切り離されています。
まとめ|正解を教えてもらう学び」から「前提を更新する学び」へ
この記事では、「どうすれば正解ですか」「失敗しない選択を教えてください」
という問いが、なぜ繰り返されるのかを整理してきました。
かつては、社会や制度の側に正解が用意されており、それに従うことが、合理的で安全な生き方でした。
その前提は、教育や社会の仕組みを通じて、当たり前の考え方として刷り込まれてきました。
しかし現在は、正解は事前には示されず、選択の結果は「動いてみてはじめて分かる」時代へと移りつつあります。
にもかかわらず、思考の前提だけが「どこかに正解があり、それを教えてもらうものだ」という感覚のまま残っています。
この前提と現実とのズレが、「正解を探し続けてしまう」「決めきれず、動けなくなる」という状態を生み出しています。
当スクールでは、いま起きている変化を、「誰かの用意した正解に従う時代」から、
「自分で前提を置き、選び、必要に応じて更新していく時代」への移行だと捉えています。
ここで大切なのは、どちらが正しいかではありません。
いま自分が、どの前提に立って判断しようとしているのかを、自覚できているかどうかです。
正解が示されることを前提に探し続けるのか。
それとも、不確実さを含んだまま、自分で決め、調整しながら進む前提を選ぶのか。
この問いにどう向き合うかが、これからの学び方や働き方の土台になっていきます。